【撮影記】積丹半島 神威岬
風に吹かれてしゃこたんブルー
北海道の西部に位置する積丹半島。鉄道も幹線国道も内陸部にしか通っておらず、半島部は積丹岳など山々が広がる。そのため、美瑛や富良野などの丘陵地や、十勝平野のような北海道らしい景色が広がるというよりは、どちらかというと複雑に入り組んだ海岸線など、険しい地形が目立つ。今回は春先に積丹半島の先端、神威岬に訪れた時の記録。
札幌から車で約2時間半。余市までは国道5号、余市からは国道229号をひたすら直進するとこの積丹半島へ到達する。「積丹(しゃこたん)」は、アイヌ語の「Sak-kotan(夏の郷土、村)」が語源となっている。アイヌ民族は夏の時期にこの付近に集まって漁をしていたのだろう。この積丹半島近辺ではウニやタラ、サケなど1年を通して水揚げがある漁業の盛んな地域である。ちなみに、「ソーラン節」はこの積丹半島でニシンを求めてやってきた漁師たちの作業歌が発祥と言われている。
遠くに見える山々にはまだ残雪が残る。この日は快晴でより遠くの山々までうっすら見えている。奥の方に見えているのは約90km離れた寿都町の方の山だろうか。一方近辺に目を移すと、駐車場関連施設以外の建物は見当たらない。
「しゃこたんブルー」と呼ばれる理由は一目瞭然。この近辺の海はとびきり青い。札幌から積丹へ向かう際、途中小樽、余市などを経て向かうが、道中を進むにつれその青さは増していくように感じる。この日はまだ春先。夏になるとより透明度を増した海が広がるとかなんとか。
そして海沿いは砂浜ではなく断崖絶壁が続く。北海道の地形は太平洋側は砂浜が多く、日本海側は崖が多い。これはアイヌの伝説によると、コタンカラカムイという国造りの神が太平洋側と日本海側の海岸線の整理を男女の神に命じたところ、いろいろあって日本海側の仕事が遅れ、結果荒削りになったとかなんとか。
そして積丹半島の先端、神威岬も例に漏れず、険しい道のりが続く。「チャレンカの道」と呼ばれる遊歩道が整備されているが、一部は断崖絶壁に沿って作られているため、足元は崖、もはや海の場所もある。高所恐怖症にとっては少し辛い道のりになるかもしれない。
「カムイ」は一般的に「神」と訳されるが、状況によっては「荒神」という意味を含んでいることがある。ここ神威岬は海上交通の難所でもあったため、後者の意味合いが強い。陸路でアクセスできるようになった現代でも、風が強い日などは、良く晴れていようが遊歩道が閉鎖されていることもあるので、岬の先端へ訪れる際には事前にHPなどで確認しておくのが吉。
四方八方は海で囲われている。階段を下ると海。まるで地球の表面に降りるかのように。神威岬先端までの道にはいくつか展望スポットがある。あれこれ回って行くと片道30〜40分くらいかかるので、歩きやすい服装で行くことをオススメする。
よく観光系の写真で用いられるのは二つ前の写真のような光景だが、実際は振り返って見た景色も日本らしさを感じない、どこか違う国に来たかのような景色が広がる。
海沿いを飛び交う鳥。愛用のSIGMA35mm F1.2 DG DN Artは解放F値1.2の大口径レンズのおかげで、少し絞るだけでくっきり解像した絵を撮ることができる。一見、パープルフリンジの出そうな風景だが、海面の細かなうねりまでしっかり捉えている。重たいレンズだが、非常に頼もしい。
岬の先端から続く岩はこの地の果て感が出ている。中心に聳え立つのは神威岩。ここには義経伝説が残っている。源義経は実は生き延びており、蝦夷地に逃げていたとかいう話。そして出会ったアイヌ民族の娘、チャレンカと出会ったが、義経はそのまま大陸に向けて出発してしまう。悲しんだチャレンカは身を投げてしまい、のちの神威岩となった。以後、この近辺を通る船舶に女性が同乗していると、船が転覆してしまうことが相次ぎ、この地は女人禁制の地となった。
ここまでの話を振り返ると、カムイ(荒神)という名称、そして海上交通の難所、義経伝説、何かつながっているような気がしなくもない。
さて。神威岬から少し戻ったところにある「島武意海岸」も面白い。駐車場から50mくらいのトンネルを抜けると、海を一望できる展望台がある。夜は星も綺麗に見えそうだが真っ暗なトンネルを通り抜ける勇気はない。
神威岬の駐車場は夕方には閉鎖されてしまう。そのため、時期にもよるが夕日を見るためには少し移動して海沿いの展望駐車場から眺めるのが良い。積丹ブルーに沈む夕日。今日はここまで。